他人が夢中になっているものを語った本は、自分が同じ趣味でない限り、たいくつだったりチンプンカンプンだったりする。でもこのゲームの本は、最新のはおろか、生まれてから一度もゲームというものをしたことがない私でも(世代的には合ってるんですが、あの一世を風靡した「インベーダーゲーム」すら、したことありません。大丈夫か私?)すごく面白かった。
それは本書が「ゲームで遊ぶ本」ではなく「ゲームを遊ぶ本」だからだ。
前者のばあいゲームは単なる「道具」だが、後者のばあい、それは「ひとつの世界」だ。著者ブルボン小林は、ゲームについてはぜったいに譲らない。(彼のもうひとつの名前、長嶋有名義で書いている純文学に、これほどの必死さはない!)ブルボンはむきになる。そのなりかたに、品がある。それはモノではなく、足場にむきになっているからだろう。自分を育て、立たせてくれているフィールドを揺るがそうという勢力に対してむきにならなければ、いつなるのだ!
ゲームを知らない私にとってこの本は、未知の世界へいざなう冒険記のようなわくわく感があった。その「未知」が、最新ゲームを“出たら買い”して次々内容紹介をするのではなく、過去のゲームの話が多いというのがまた面白かった。
一度やったゲームは、敵の動きや結末をもう知っているし、今のに比べるとチャチなかんじの作品が多い。それでもブルボンは「自分がいかにこのゲームを遊びきっていなかったか」を発見し、驚くのだ。それは、犯人がわかってしまって、なお読み返しに耐えうる推理小説と同じではないかと思うし、だいたい「本を読み切った」って、どういうことなのか。ある人のことを「知り尽くす」ことができないように、われわれは「本を読み切る」なんて、そもそもできないんじゃないか。そんな読書の根源にも、ブルボンは迫っているのだ。(ホメすぎ?)
この電子マネーのご時世であっても「コインを集めるゲーム」が面白く、人は“チャリーン”というあの音を楽しんでいるのではないか、という考察。RPGのパッケージの、キャラクターたちの配置が、プロレスの興行ポスターと似ていること(だいたい楕円の中に皆がおさまり、背中に光や炎をしょっている!)etc、これを読んでゲームが好きにならなくても、確実にブルボンのことは好きになっている、というこの事実。
小学校のとき、男子から寄越されたラブレターのような、きまじめさと高揚とかわいらしさが、この本にはある。
(青山ブックセンター六本木店 間室道子)
出版社:エンターブレイン書名:『ゲームホニャララ 』著者:ブルボン小林定価:1260円(税込み)
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高校時代、熱血教師が机の奥から取り出して「読みなさい」と私に貸してくれた「豆腐屋の四季」は、あっという間に私の心をつかんだ。返却してからもその鮮烈な印象は私の心に残りつづけ、入手しようと探していたがかなわず、このたびやっと復刊した。
母の死と自らの病気のため進学をあきらめた作者は、弟妹と父のため、家業の豆腐屋を継ぐ。昭和40年代の田舎町で、生きるということの困難さ、厳しさを短歌と文章に綴る。時には自分の無力さに夜空を見上げて泣き、運命を呪い、家族への深い愛情を噛み締める。松下竜一という才能が短歌と文章に溢れ出ており、貧困とはどういうものか、苦しみの中に生まれた短歌という希望が、どれほど作者を支えつづけたかを痛いほど感じる。
まだ明けきらぬ夜空を見上げ、身を切るような冷たい風の中で、未来を憂いた松下竜一のすべてが、この作品に詰まっている。あの時代をすごした諸先輩方も、貧しさの意味すら感じられない若者も、ぜひ手にとって欲しい。厳しい労働の中で少しだけ感じる希望、「生きる喜び」の大切さを知ることができるだろう。
(リブロ別府店 祐保博美)
出版社:講談社書 名:豆腐屋の四季著 者:松下竜一定 価:1,680円(税込み)
旅先へ持って行く本は絶対にハズしてはいけない。つまらない本は、ただでさえ重い荷物を重くする。その点、この本は大当たり。行きの新幹線ですぐに没頭し、ホテルでは夜中まで読み続け、帰りの道中で無事読了。博多に着くまでの30分、ニヤニヤと余韻に浸るオマケまで付いてきた。
物語は、天才数学者・ケインがポーカー賭博の最中、猛烈な吐き気と頭痛に襲われ気を失うところから始まる。それはケインのある才能が開花する前触れであり、彼(のその能力)を手に入れようと、多くの人が彼を追うのだが…。
まず、書名がかっこよくて目を引く。加えてスリリングでスピーディーな展開、二転三転する状況、深まる謎、魅力的な登場人物(クールでタフな女戦士・ナヴァ、大好き!)、興味深い確率論…など、ワクワクする要素が満載なのである。数学が苦手な人も十分楽しめます。超文系の私が言うんだから、間違いなし、です。
(リブロ福岡西新店 奥原未樹子)
出版社:文芸春秋書 名:数学的にありえない 上・下著 者:アダム・ファウアー定 価:各770円(税込み)
人間の思い込みというものは不思議なものだ。自分が一度「そうだ」と思ってしまったら、それが「真実」だと思ってしまう。「図地反転」という言葉をご存知だろうか?この言葉を知らなくても「ルビンの盃」と聞くと分かる人はいらっしゃるかも知れません。要は思い込みです。
誰にでも思い込みはあるはずです。しかしその思い込みが1人の人間の人生を変えてしまうとしたら決して許される事ではありません。
少し前にも無実の罪で逮捕され長い間収監させられてしまった方がいらっしゃいました。今回のこの「図地反転」に出てくる主人公望月悟もその思い込みで再び犯罪者と疑われてしまう。
十数年前に女児殺害事件の犯人として逮捕され15年間服役し罪をつぐなった望月。出所後にアパートを借り仕事を始めた矢先に起きた女児殺害事件。周りは真っ先に彼に疑いをかけた。
捜査を開始した警察、目撃者の証言により浮上した容疑者は彼ではなかった。
しかしこの事件の容疑者は否認を続けた。かつての望月のように・・・。
物的証拠など何もない事件で唯一の手がかりになるのが目撃者の証言。警察は目撃者の証言を元に取調べを続け「犯人」を特定する。
しかし証言をした目撃者が図地反転をしていたら・・・。それに気が付いた時に警察はどのように対応するのか?果たして警察は真犯人を捕まえることが出来るのだろうか?
ニュースなどの報道で見ると警察の取調べはかなり厳しいものである。
罪を犯した人間に対してなら当然なのかもしれないが,無実の人間が受けたとしたら拷問に近いのかもしれない。こういった事は今後フィクションの世界だけであってほしい。
出版社:講談社書 名:図地反転著 者:曽根圭介価 格:1680円(税込)
(春日部市 紅雲堂書店 石川貴雄)
「小説フランス革命史」(集英社)を刊行中の、西洋歴史小説家・佐藤賢一さんが、「フランス革命史」の勢いもそのままに、手軽に楽しめる新書形態で、歴代フランス王朝史を描き出してくれました。
西暦987年に現在のフランスにあたる地域の王に選出された”ユーグ・カぺー”。
しかし、王とはいってもその勢力範囲はパリ近郊やオルレアン辺りという、フランス全体から見れば豆粒のような地域でしかなく、周囲は強大な勢力を持つ貴族達の領土に囲まれています。
当時はイングランド王もフランス地域に領土を持っており、即位いきなり四面楚歌という状況。ここから直系・傍系のブルボン朝まで合わせて、800年に亘るフランス王の権威を築き上げた歴史とはどんなものだったのか?まずはユーグから始まる“カぺー朝”の300年と歴代王の治世が簡潔ながら、血沸き肉踊る筆致で描かれていきます。
何しろフランス王には“ルイ”と“フィリップ”だけで30人。「昨日の主君は今日の敵」とばかりに離合集散する貴族・諸侯達も“シャンパーニュ伯何某”といった人々がしょっちゅう同じような名前で登場して仏王の味方になったり、イングランド王に臣従してみたり。
そのイングランド王も、フランスにある領地の領主としてはフランス王に臣下の誓いを立てていたり、と真にややこしく、カタカナ名前が苦手な方には手に取りにくそうな中世フランス史ですが、西洋史を俯瞰し血肉にしている当代きっての西洋歴史作家の手により、新書らしく簡素で分かりやすく、しかも熱気を帯びた一大歴史叙事詩にまとめあげられています。
「尊厳王」、「勇敢王」、中には「肥満王」などとおくり名された王達による“時間を超えた逆転劇”、史実物を読む醍醐味が存分に味わえる一冊です。
(羽田書店 安武祥吾)
出版社:講談社書名:『カぺー朝~フランス王朝史1~』著者:佐藤賢一定価:777円(税込)
売れ筋の本からマニアックな専門書まで、本のことを知り尽くしている書店員さんがオススメの本を紹介する読書日記。書評だけでなく、時には誰も知らない書店の裏話などが聞けることも!?読書好きな人必見のブログです。
眞鍋かをりさんや泉麻人さんのブログをアップ中!