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書店員のオススメ読書日記

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開店準備の舞台裏

2006年9月20日

 海にも旅行にもバーゲンにも行かないまま、私の夏はつれなく去って行った。気がつけば空気はもう秋の香りで、ブーツ姿の女性を街なかで見かけるようになり、日が落ちるのは早く、仕事帰りの夜の風は冷たい。私の夏は一体どこへ行ってしまったのかというと、10月に新規開店する店舗のスタッフになったため、開店準備の荒波にもまれ泡となって消えたのである。4日間の夏休みは休養にあててなんとなく終わってしまい、思い描いていたきらきらとまぶしい夏は手の届かないものとなってしまった。

 さて書店の開店準備とは何をするのだろうか。ここで紹介してみようと思う。まずデザイナーが設計した店舗空間の図面を見、大まかな売り場構成を決める。文学書はここ、児童書はここというようにジャンル分けしたら、各分野に精通する先輩達から意見を頂戴し、書棚一つ一つの細かい構成を考え、書籍を選ぶ。

 書籍を選ぶと一言で言ってもそれは大変な作業で、現在のベストセラーから長らく読み継がれているロングセラー、専門書や古典まで、売り上げデータとベテラン社員の助けを借りて、来店するお客様層を予想しながら選んでゆく。

 選書を終え出版社に注文し、次々と入荷する書籍を倉庫で仕分けてダンボール箱に詰め、工事が完成した店舗にそれらを搬入する。搬入したダンボール箱(なんと数千箱)から書籍を取り出し、書棚の然るべき場所に収め、商品に過不足がないか確かめ、不足があれば発注をし、営業に必要な備品を調達し、毎日発売される新刊を陳列し、スタッフに教育をし、……そうしてようやく開店の日を迎えられるのである。

 開店まで時間がないと焦りながらも、みな高揚した様子で働いている。少し不真面目な喩えになるが、まるで文化祭の準備といった様子で、わくわくしている。きらきらの夏は手に入れ損ねたけれど、代わりに遅れて来た青春のような毎日を手に入れた。それはそれで今は満足している。

 開店の際には、皆様のご来店をお待ちしております。

(紀伊國屋書店ららぽーと豊洲店 野口亜希子)

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