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2004年に翻訳が刊行された『犬は勘定に入れません』(早川書房)でSFファンにとどまらず、広く読書界の話題をさらったコニー・ウィリスの最新刊が発売された。訳は〝メッタ斬り〟でおなじみの大森望、装画は松尾たいこで、前作と同じコンビ。これじゃあ、お勘定しないわけにはいきませんね。
ということで、買っちゃいました、『最後のウィネベーゴ』(河出書房新社)。編訳者あとがきによれば、93年刊行の第2短篇集『Impossible Things』の収録作から4篇を選りすぐったということなので、最新刊とは言っても『勘定』より前の作品ということになる。
オビにいわく、「ヒューゴー賞・ネビュラ賞他、収録作4篇あわせて全12冠!」だそうな。ますます期待が高まる。
表題作の〝ウィネベーゴ〟は実在のキャンピングカーのメーカー。近未来のアメリカを舞台に、最後の1台となったキャンピングカーを取材するカメラマンの過去と現在をたくみに織り交ぜつつ、滅びゆくもの、失われゆくものへの哀惜を情感たっぷりに描く。
この世界では伝染病で犬が絶滅し、主人公が生業とするカメラマンの仕事も機械に奪われようとしている。
消えゆくものたちに彩られた物語が結末に見出した1枚の写真。そこに写るのは赦しか、絶望か。女王ウィリスのうまさを堪能できる1篇だ。
残りの3篇はうって変わってコメディタッチ、というか、コメディそのもの。
なかでも「スパイス・ポグロム」は著者がスクリューボール・コメディへのオマージュと明言するだけあって、ドタバタ恋愛コメディの大傑作(ちなみにスクリューボールは、30年代のアメリカで流行した恋愛映画のジャンル)。日本製の宇宙コロニー〝SONY〟にエイリアンが大挙して押し寄せ、NASAに勤務する婚約者から宇宙人の居候を押しつけられた主人公クリスが、〝居候の居候〟となった言語学者ハッチンズと恋に落ちる、抱腹絶倒の物語。
『或る夜の出来事』や『赤ちゃん教育』を観たことがある人も、ない人も、読んであたたまっていただきたい1篇だ。
コニー・ウィリスの欠点はこんなにおもしろいのになかなか〝次〟を読めないことだ、と誰かが言っていた(たぶん、僕だ)。
SFはちょっと、という人にもぜったい楽しんでいただけるので、ぜひとも本書でウィリスの魅力に触れていただき、『勘定』やその他の著作にも手を伸ばしていただきたいと思う。そして、みんなで次の翻訳を待とうではありませんか。
出版社:河出書房新社 書名:最後のウィネベーゴ 著者:コニー・ウィリス 大森望 訳 定価:1,995円(税込み)
(紀伊國屋書店梅田本店 星真一)
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