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鈴木光司さん 作家 すずき・こうじ=『楽園』で作家デビュー。『リング』シリーズが計800万部のベストセラーとなり、ハリウッドで映画化。欧米を中心に講演活動を行うほか、政府の諮問機関「少子化への対応を促進する国民会議」委員を務める。著作が世界20ヶ国語に訳されている。最新刊『なぜ勉強するのか』(ソフトバンククリエイティブ)
ぼくは現在『エッジ・シティ』というタイトルの長編小説に取り組んでいます。5年の長きに渡って生みの苦しみを味わい、ひょっとしてこの小説には解決策がないのではないかという恐怖と戦ってきましたが、ようやく今になって、ラストが見えてきました。ばらばらになっていたジグソーパズルの最後の一片が、はまりそうな気配がするのです。
『エッジ・シティ』は物理と数学を主に扱ってます。と書くと、敬遠される方も多いかとも思いますが、ドラマチックでスピード感ある展開をしますので、たぶん難しい箇所にこだわっている余裕もなく、物語に運び去られるはずです。
『リング』『らせん』『ループ』の3部作を引き合いに出すまでもなく、ぼくは普段から科学的に物事を考えようとしています。ホラーやオカルトの類いを小説の題材に据えるのは、物理学の仮説部分に楔(くさび)を打ち込む快感にとり憑かれているせいかもしれません。
科学に関して、ぼくの言いたいことを、実にわかりやすく、コンパクトにまとめているのが、竹内薫氏の『仮説力』です。哲学者のカール・ポパーの指摘によれば、「科学」と「科学でないもの」とは「反証可能かどうか」という観点で分けることができます。常に反証可能な科学は、仮説をたてて実験することにより、「確からしさ」が確認されていきます。
そう、最初に必要とされるのは、「仮説をたてる力」なのです。竹内氏は、「仮説力」の 重要性を実にわかりやすく愉快な例をあげながら、説いていきます。目からウロコが 落ちるだけでなく、日常生活を生き抜く上でも役に立つヒントが満載です。
たとえば、あなたが現在、人生の大ピンチに直面しているとすれば、「仮説力」をフル活用することによって、よりよく克服するチャンスを増やすことができます。ぼく自身は、「科学的に考える」ことの意味を、「根拠のない風潮に流されることなく、世界に共通する論理をもとに意見を形成し、表現しようとする態度」というふうに解釈しています。
根拠のない勝手な屁理屈(へりくつ)は世界に通用しません。議論の場にあって迷惑なだけでなく、世の中に様々な弊害をもたらします。世界中のひとりひとりが、もうちょっと「仮説力」を身につけてくれたら、世界はよりよくなると信じています。
出版社:日本実業出版社 書名:仮説力 著者:竹内薫 定価:1,365円(税込み)
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