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Izumipf_4 泉麻人さん  コラムニスト・気象予報士
いずみ・あさと=「週刊テレビガイド」等の編集に携わった後、フリーコラムニストとして独立。「新東京23区物語(新潮社)」「東京検定(情報センター出版局)」など著書多数。2007年3月に「東京版アーカイブス(朝日新聞社)が刊行された。

 このところ、秀(すぐ)れた“人物ドキュメンタリー”の本を何冊か読んだ。『1976年のアントニオ猪木』(柳澤健・著/文藝春秋)、『平凡パンチの三島由紀夫』(椎根和・著/新潮社)、そしてもう1冊、両者とほぼ同じ時代に数々の名作ドラマを手がけた久世光彦──の仕事を紹介する『「時間ですよ」を作った男』(加藤義彦・著/双葉社)も面白かった。

 久世ドラママニアを自称する著者が、足かけ6年に及ぶインタビュー取材をもとに構成した本なのだが、久世氏の興味深い談話とともに、そこから展開される著者のドラマ、バラエティー番組についての論述も鋭い。テレビ番組のような、視覚的な面白さを活字で表現するのはなかなか難しいものだが、実に的確な、かつ簡潔な文章でまとめられている。

 表題にある『時間ですよ』(1970年~)に始まって、『寺内貫太郎一家』、『ムー』、『ムー一族』と続くTBS系の〈水曜劇場〉の久世演出作品を、本筋から脱線したコントシーンの印象から“寄り道ドラマ”と名付けて語っていくわけだが、コントの一つひとつが緻密に再現されている。

 そうか……。『時間ですよ』に登場する3人組、トリオ・ザ・銭湯の初期のメンバーは、
堺正章と樹木希林(当時。悠木千帆)ともう1人、西真澄って女の子だったんだ……。「いいじゃない、いいじゃない、ねえねえ~」ってギャグ、そういえばやってたなぁマチャアキ……。

 解説を読んでいると、忘れていた往時のブラウン管の光景が、リアルによみがえってくる。田中角栄に似た豊島泰三というタレント(もとは久世氏の麻雀仲間の葬儀屋さんだったらしい)を始め、ドラマを賑わせたクセのある脇役陣の紹介も懐かしい。巻末には、久世作品の市販DVDやビデオのリストが掲載されている。

 これを見て驚いたのは、DVD化されていない『ムー』などの些細なコントシーンまで、細かく解説されていることだ。著書は、僕より4、5年下の世代だが、家庭にビデオデッキなどない時代、いちいちノートに記録していたのだろうか……。オタク的なデータに加えて、文章も巧い。鬼才・久世光彦を扱った、恐るべき研究本である。

Photo_328 出版社:双葉社
書名:「時間ですよ」を作った男
著者:加藤義彦
定価:1,575円(税込み)

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