彩乃ちゃん。一見ふつうの小学5年生だが、彼女にはふしぎな力がある。「教主さま」としての力、ちょっとした未来を見通す力。彩乃ちゃんはその力で周りの人に幸せを振りまいていく。
「英輔との結婚は悪くない。ただ他の道だってあるんじゃないか・・・ぴかりと光っている道があればいいのに。」3年付き合った彼との結婚を前に迷う、智佳子。
「ただ時を無駄にしているだけではないのか。あるいは逃避なのではないか。」大学受験を控えた高校3年の夏、土中に埋もれた石階段を掘り起こしつづける、徹平。
「わたしは、前ほどお父さんのことが好きじゃない。お父さんと一緒にいると、苛々することが増えてきた。」家では両親の不仲に心を痛め、学校ではクラスメートに馴染めずにいる佳奈。
そんな3人の背中を、彩乃ちゃんはそっと押してあげる。そう、ほんのちょっと。幸せの方へ。
勿論、現実を生きる僕らにこんな「お告げ」は期待できない。でも、ちょっとした一言、僅かなきっかけから、僕らの日々は確かに変わっていく。そう考えると、世の中は「お告げ」に満ちているのかもしれない。幸せになるか不幸になるかは別として。
ちなみに「お告げ」というタイトルを見た時、僕はまず胡散臭いと思ったものだ。橋本さんの作品と気づかなかったら、そのままページをめくることはなかったのかもしれない。
橋本紡作品との出会いは、2006年刊の『流れ星が消えないうちに』に遡る。同僚3人で酒を飲んでいて、そのうちの1人がこう言ったのだ。「君たちも『流れ星』を読んで、心を洗い流したほうがいいよ」と。以来、僕は橋本さんの著作を追いかけている。考えてみれば、あれも「お告げ」の一種だったのかもしれない(笑)
出版社:講談社書名:彩乃ちゃんのお告げ著者:橋本紡定価:1,470円(税込み)
(紀伊國屋書店新宿本店 吉野裕司)
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