空に溶け込むように佇む一本の桜。他を圧倒せず、存在を誇示せず、ただひっそりと木々の一部で佇む。
大森克己の写真集『CHERRY BLOSSOMS』の桜は、これまで目にしたどの桜の写真とも違うようだ。豪華絢爛でもなくただ儚いわけでもない。野生の桜。いっせいに芽吹く木々と一緒に、咲く咲く桜。そして、写真に漂う空気は「夢の中」。
帯にあるとおり「春の夢」がしっくりくる。それも春にみる夢ではなく、冬の最中、春を待ち焦がれてみる夢のようだ。僕のイメージは「春眠暁を覚えず」の風景ですけどちょっと違うかな。
おもしろい写真にはなにがしかの物語が潜んでいる。それには見る人に訴えかけ、惹きつけるちからがある。写真で受け取るイメージは人それぞれだろうけど、確かにあると思う。
その物語に触れることで、ただ眺めるものから、体験者になることができる。そして、この写真集もそんな一冊だ。
(リブロ金沢店 乙丸唯)
出版社:リトル・モア書名:CHERRY BLOSSOMS著者:大森克己定価:4,095円(税込み)
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