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書店員のオススメ読書日記

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 働き始めた頃に、父に「城山三郎さんの経済小説でも読むといい。」と言われ、何冊か読んだ記憶があります。でも、城山作品の中で一番好きだったのは、海の見える生活を描いた「湘南」というエッセイ。

 そうか、こんなすごい作家さんは、家の近くに住んでいるのか! やはり、湘南は作家に愛される場所なんだ!と思いました。昨年の城山三郎さんの突然の訃報は、あまり会わないけれど大好きな親戚を一人亡くしたようなとても寂しい気がしました。

Photo  最後の遺稿になるこの本は、妻、容子さんとの運命的な出会いから、一緒に泣いたり笑ったりして過ごした夫婦の時間、そして最後に容子さんが癌で亡くなる時までの日々を綴っています。

 湘南の茅ヶ崎に移り住み、単調だけれども静かで幸せな日々を、愛おしく振返っています。子供達が巣立ってから、茅ヶ崎や平塚の駅前で待ち合わせをして、フランス料理やお蕎麦を愉しむ時間。本当の夫婦の絆とか、幸せな時間というものは、こうでなければいけないのではないか? 読む者達に深く問いかけます。

 容子さんに先立たれ、一人過ごす七年の喪失の日々。ふと気づくともういないはずの、妻に声をかけている老齢の作家。離婚だの、バツいちだのそんな言葉が簡単に出てくる世の中にいつの間にかなっていってしまったけれど、それでも、こんな一途な愛情を守り続けた人は、いたのだと涙なくして、読めませんでした。

 「天から、落ちてきた妖精」と亡き妻を偲ぶ夫。
 この本は、作家城山三郎が書いた最高で最後の恋愛小説だと思いました。

出版社:新潮社
書名:そうか、もう君はいないのか
著者:城山三郎
定価:1,260円(税込み)

(有隣堂ヨドバシAKIBA店 佐伯敦子)

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