お気に入りの小説が他メディアに移植されたのをみてがっかりするなんてことはしょっちゅうある。「ここは主人公をわらうところなのになんでベタなクローズアップで感情移入させようとするんだよお」とか「フォトジェニックなだけのコスプレ作品じゃん」とか。
だからこれほど完成度の高いコミカライズを読んだとき、面白いと思う前に、もうただただびっくりしてしまった。藤野千夜原作、志村貴子画の『ルート225』。
そもそも数年前、藤野千夜の『ルート225』が文庫化されたときにカバー装画を担当したのが志村貴子だった。当時は中身もマンガ?と思ってしまうような装丁にちょっとどきっとしたけれど、今は彼女に絵を描いてもらいたいと思った気持ちがかわる。だってこの二人、小説とマンガ、ちがうメディアだけれど、まちがいなく同じ文体で書いているんだもの。
物語は、姉のエリ子と弟のダイゴがいつもと違う世界に迷い込んでしまうという筋。町も学校も以前と同じ、友人の態度がちょっと変だけどそれはなんとかなりそう、困るのはパパとママがいないってこと…!
パラレルワールドものだけれどSF的冒険を繰り広げるのではない。突然待ち受けていたおかしな状況を、14~15歳の女の子が自分の小さな世界の中で受け止めていく、そんな姿を描いた良作。
マンガに小説でのセリフがそのまま落とし込まれている箇所はいくつもあるのに、まったく重たくならない。派手な演出なし、流れるようなセリフまわしとコマ割でぐんぐん読ませるいつもの志村作品の魅力通り。そこで同時に原作が、中学生らしい思考の流れを地の文にすることで恐るべきテンポのよさを保っていたことを再確認できるのだ。
うん、小説でもマンガでも、パパとママがいなくてすごく不安なのはあたりまえだけど、急に自分たちが悲劇の主人公だなんて思えないんだよ。そうそう、ここではわざとらしいクローズアップもスローモーションもBGMもないんだ!
読み比べれば、内容だけではなく、この話がこの語りでまとめられたことに感謝したくなるでしょう。どうか、どちらかといわず、両方を読み比べてみてください!
(リブロ港北東急SC店 藤原美紗子)
出版社:新潮社書名:ルート225著者:藤野千夜定価:540円(税込み)
出版社:講談社書名:ルート225著者:藤野千夜:作/志村貴子:画定価:680円(税込み)
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