鈴木光司さん <作家>すずき・こうじ=『楽園』で作家デビュー。『リング』シリーズが計800万部のベストセラーとなり、ハリウッドで映画化。欧米を中心に講演活動を行うほか、政府の諮問機関「少子化への対応を促進する国民会議」委員を務める。著作が世界20ヶ国語に訳されている。最新刊『なぜ勉強するのか』(ソフトバンククリエイティブ)
ぼくにとって、小説家としての原点となる作品は、一連の宮沢賢治作品と、ジューヌ・ベルヌの『十五少年漂流記』である。小学校4年のとき、宮沢賢治の伝記に感銘を受けて詩を書き始め、小学校6年のとき、『十五少年漂流記』を真似て子どもたちが巨大な筏(いかだ)で太平洋を横断する物語りを書き始めた。
処女作となる小説のタイトルは『七つの海の冒険旅行』。原稿用紙45枚まで書いたところで、ストーリーが破綻し、未完のまま終わってしまった。それから約20年が経過した頃、ぼくは、愛する女を追う男の意志が、1万年かけて太平洋を横断する物語『楽園』を書いて作家デビューを果たした。少年の頃に未完のまま放置された作品がようやく完成されたとみるべきであろう。男にとって、少年の頃の憧れは、特別に強いエネルギーを持つ。
ところで、椎名誠さんにとっての、作家としての原点は、ぼくと同じく『十五少年漂流記』である。氏は、物語の舞台となる島がどこにあるのかと疑問を抱き、仲間たちと探索の旅に出る。南米パタゴニア地方の太平洋岸に位置するハノーバー島か、はたまたニュージーランドから1000キロばかり東に位置するチャタム島か……。
小説に書かれている事実から類推して、一行は結論を出すに至るのだが、その旅の模様が、ときに爆笑させられるほど愉快なのだ。
出版社:新潮選書書名:「十五少年漂流記」への旅著者:椎名誠定価:1050円(税込み)
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