昨年7月号より「SFマガジン」誌上で連載され、ネットを中心に大きな話題を集めてきた宇野常寛のサブカルチャー批評が一冊の本にまとまった。書店で人文書の棚を管理している立場から言えば、これで現代社会批評に関する必読書がまた一冊増えたということになる。
セカイ系を評価し現在のサブカルチャー批評を代表とする東浩紀とそのフォロアーを「古い!」と判じるところから始まる発言は、大変なインパクトがある。しかしその発言には確かな説得力があるのだ。
彼は「新しい」作品群に見出した共通感覚を「決断主義」と名指した。何に価値があるのか分からない世の中で、それでも生き残らなければならない、何かを決断していかなければならない、(そして勝ち残った者がすべてを得る)というメンタリティ。
小泉構造改革、それに伴う格差社会から発したこの「決断主義」を、『DEATH NOTE』『無限のリヴァイアス』『仮面ライダー龍騎』などといったこれまで批評の対象とならなかった卑近なサブカルチャー群から掬い上げていくくだりは圧巻である。
本書のさらに瞠目であるところは、従来の古い想像力に対して「決断主義」による新しい想像力を発見したということだけではなく、さらにその「決断主義」までがいずれ乗り越えられるべきものとして、その限界と打開策まで検討されている点である。
例にあげられる『木更津キャッツアイ」やよしながふみの漫画作品も、「決断主義」以後の想像力として考えると、そこに一つの思想の流れが見えてくる。90年代からゼロ年代、さらにその先までを視野に入れ一冊に纏め上げた、力強い仕事である。状況は整理された。本書に続く更なる作品・分析が待たれるところだ。
(リブロ港北東急SC店 藤原美紗子)
出版社:早川書房書名:ゼロ年代の想像力著者:宇野常寛定価:1,890円(税込み)
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