本屋さんへ行こう!

書店員のオススメ読書日記

本文です
前の記事

Photo_2 世界でいちばん贅沢な旅とはどういうものだろう?シェフお抱えの地中海クルージングか、豪華客船による世界一周か、ついに実現らしい宇宙空間一番乗りか。

 金さえあれば、という「成金旅行」はオヨビじゃない。ため息の出るような贅沢さは、魂の満足あってこそ。

 本書は、著者の分身らしい「誇大妄想狂」ならぬ「古代妄想狂」(=パレオマニア)を自称する男が、大英博物館へ通い、気に入った壁画や像があるとその発掘場所へ旅をする、それを繰り返す、というなんとも贅沢な13の旅が載っている。

 パレオマニアの男は下調べが得意だそうで、博物館のブックショップで参考書を買い、自分のための勉強をする。ここにまず学問の豊かさがある。そして現地に入り、古代を想像し、その土地のいまの暮らしぶりと比較する。ここに途方もない時間の芳醇さがある。

 もちろん「幸せな場所」ばかりではない。メソポタミア文明を見に行ったイラクは、男が去ってすぐ、アメリカによる空爆が始まり激戦地となった。遺跡は破壊され、知り合った多くの気のいい人々が死んだ。

 しかし、男はこれらの旅を書き、未来に残そうとする。建造物は消滅しても、旅人の思いは破壊できない。ここに書物の力が、人のエネルギーがある。
旅を通して、文明、本、人間に心揺さぶられる、世界でいちばん贅沢な本だ。

(青山ブックセンター六本木店 間室道子)

出版社:集英社
書名:パレオマニア
著者:池澤夏樹
定価:900円

前の記事

当ブログの記事へリンクを張った方はトラックバックをどうぞ。ただし、当ブログの編集スタッフによって事前に確認した後で掲載します。基準は<トラックバックに関する編集方針>をお読み下さい。

売れ筋の本からマニアックな専門書まで、本のことを知り尽くしている書店員さんがオススメの本を紹介する読書日記。書評だけでなく、時には誰も知らない書店の裏話などが聞けることも!?読書好きな人必見のブログです。

      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29