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Photo_2 大岡裁きで有名な大岡越前守が、老母に「女はいつまで殿方に御興味がおありなのですか」と尋ねると、母は火鉢の中を棒でかき混ぜながら「灰になるまで」と言った。 この話しは、大岡政談か落語のマクラからかは忘れてしまったが、「女は生まれながらに女である」という言葉もあるくらいだから、生きることに対して貪欲であり、強いのは男より女なのであろう。

 「四谷怪談」のお岩さんも伊右衛門に毒を盛られて、顔が崩れなければあんな恐慌には及ばなかった。

 あの時代の女は顔が何よりも命だったというのは、塩見鮮一郎「四谷怪談地誌」(河出書房新社)であり、「大奥二人道成寺」の主人公、女狂言師歌吉は、相弟子の嫉妬から頬に剃刀で傷を付けられ痕が残った。

 前作では心ならずも公儀(幕府)隠密の手先にされ九死に一生を得たが、今回またしても密命によって、かつて将軍の子をなし市井の人となっている同じ狂言師照代を守り、再び江戸城内に召され「京鹿子娘道成寺」を踊るという。

 将軍や照代の再登場をこころよく思わない大奥の女、隠密や大名家家老の思惑がからむ。

 だが、傷を気遣いつつも歌吉の芯の強さ、江戸っ子らしい心意気は本作の軸であり、同じく紹介する加賀まりこの本と通じる。

Photo_3  自分で「純情ババァ」という東京っ子、街っ子の独特の照れは可愛らしく、おせっかい焼きで、恋や情にもろく、かといってべたべたしていない。
まさに「灰になるまで」(失礼!)。常にスポットライトを浴びている彼女のような人生はおくれなくても、彼女達のような生き方・考え方を
している人は、いつの時代でも輝いて見えるのは常である。

 色々ある道成寺物は例えば歌舞伎だと、今も昔も看板の女形が勤めるもの。山伏に恋した恨みと執念が蛇の化身となり、
演じ手はそれを踏まえて華もあり酸いも甘いも噛分けた者ではないといけないという。

 歌吉と加賀まりこはその資格が充分にある。時代を超えた連れ舞である。

出版社:講談社
書 名:大奥二人道成寺
著 者:杉本章子
価 格:1,890円(税込)

出版社:講談社
書 名:純情ババァになりました
著 者:加賀まりこ
価 格:560円(税込)

(大盛堂書店 山本亮)

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