ある日突然、人類は「海」に見捨てられる
そんな世界を、想像したことがありますか。 本書はまさに、そんな世界です。
温和なはずのイルカたちが集団で船を襲い、人間を喰い殺したかと思えば、想像を絶する威力の津波が北欧をのみこみ、広大な土地が海に沈む。ニューヨークでは深海にしか棲めないはずのカニが猛毒を持って上陸し、未曾有の被害をもたらす。めまぐるしく変異していく「海」を前にして、人間は逃げ場のない恐怖にさらされる。一体「何」が海を変えたのか。世界中の科学者が立ち上がり、調査を進める、その先にあったものとは・・・。
「ありえない」思わずそう言いたくなってしまうのですが、一方で、強くは否定できない自分がいます。本書の、フィクションとは思えないほどのリアリティーが、そうさせているのではないでしょうか。
まず、読み始めた瞬間から最後の1ページまで、私たち読者はドキドキさせられ続けます。上・中・下合わせて1500ページ以上ものボリュームであるにも関わらず、まったく飽きさせず、「え、もう?」というくらいあっという間に読み終わっています。時に恐怖し、時に納得し、まさに「手に汗握るストーリー」とは本書のためにある言葉といっても言い過ぎではないくらいです。筆者は、取材に4年かけたというのですから、本書の緻密さにもうなずけます。
しかし、ドキドキすると同時に、怖いほどの危機感も覚えます。
私たちは、日々ゴミを生産し続け、空気を汚しながら生きています。「なんとかしなくちゃ」そう後ろめたく思いながらもしかし、実行できない。危機感の中感じる、そんな「後ろめたさ」が、この小説によりいっそうのリアリティーを与えているのかもしれません。
私たちはようやく、地球が負った深い傷に「気づき」はじめました。「何かしたい、でも何をすればいいんだろう」そう考えている方は、まずは、本書を読んでみてはいかがでしょうか。
(文教堂R412店 近藤朗子)
出版社:早川書房 書名:深海のYrr(上・中・下)著者:フランク・シェッツィング定価:840円(税込み)
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