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書店員のオススメ読書日記

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Htbookcoverimage 女優の山田五十鈴は、かつて映画のロケハンの為に北海道の海底炭坑へ、一昼夜向いた事があったという。

 「…外へ出たとたんに町家の灯がずーっと点いていましてね。ハーモニカ長屋のきれいな灯が。ほんとにきれいなんです。それから星空と、おいしい空気を吸ったときはね、『ああ生きてる』と思いましたね。そういうことがとっても楽しかった」(「君美わしく」川本三郎・文春文庫)。

 明治以降、日本の近代化にとって石炭は必要不可欠なもので、民需・工業・戦争の為のエネルギー源として主流を占めていたが、昭和30年代のエネルギー政策の転換が原因で石油にその座を取って代わられ、日本各地の炭鉱は閉山に追い込まれていった。

 本書は九州という風土、キリスト教やエネルギー政策を通じて、かつて「炭鉱太郎」と呼ばれた坑夫の聞き書きを中心としたルポである。

 こういった事を当事者に聞くのも、今が最後かもしれず(それは戦争体験でも同じだ)、住む場所を福岡に移してまで、それをうまく聞き出した労苦は、並大抵のものではなかったであろう。

 「銀座の怪人」など裏面史を著してきた著者の一つの集大成であり、こういう物が読みたかったと、思わず膝打つ本である。全くの文句なし。むしろこちらからお礼を言いたい。七尾和晃、快男子である。

 また、西鉄ライオンズ黄金期の大投手、稲尾和久は昭和48年西鉄が身売りし、太平洋クラブ・ライオンズに変わった際に監督だったが、川崎球場でのロッテ戦でボロ負けした時に、ファンがプラスチック製の席を壊し大暴れしたのを目撃した。川崎あたりの京浜工業地帯では、九州から来た元坑夫が多数働いていたからだという(「神様 仏様 稲尾様」日本経済新聞社)。

 そんな話を聞くと、本当に不謹慎で申し訳ないが、わくわくしてしまうのだ。当たり前だが、彼らはおめおめと消え去った訳では、決してなかったのだから。

出版社:草思社
書 名:炭鉱太郎がきた道
著 者:七尾和晃
価 格:1785円(税込)

(大盛堂書店 山本亮)

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