古今東西、芸術や音楽などを志す若者達は、貧乏な暮らしをしてもなお
、夢を追いかけて夢に全力を傾注してきた。
サマセット・モームの「人間の絆」や「月と六ペンス」では、かび臭い様な屋根裏の部屋に寝泊りしつつも、無我夢中で絵を描き上げ、カフェに集っては芸術への熱い思いをぶつけあう姿が、実に生き生きと描かれていた。
また、漫画家・藤子不二夫先生の若き日を描いた「まんが道」・「ハムサラダくん」は、狭いアパートの一室に籠もりながら、これも全力で“漫画”という御二人の夢に挑んでいく姿に、読み手までも熱い気持ちを灯されるようだ。
かくもかように、若者が貧乏も苦にせず、全力で信じる道を突き進む姿は物語にもなり、人の心を打つものでもある訳だが、この「東京貧乏宇宙」では、正に今現在、東京で狭い・小さい・古いなど、住む上で傍から見れば不便そうな条件を抱えたアパートに住みながら、絵画・音楽・映画など自分の信じた道を歩む沢山の若者の姿を克明に映し出している。
構成は、一人一人の住まい・部屋・本人の写真と、経歴と自分の進んでいる道にかける姿勢がごく簡単に書かれているだけの簡潔なものだ。
引っ越した時点で、壁紙が思い切り剥がれていたり、風呂無しは当たり前の築数十年のアパートばかりで、薄暗かったり、散らかっていたり、長年の間に染み付いたニオイが写真からもしてきそうな部屋も多いが、彼等・彼女等の暮らしぶりを読み、写真と照らし合わせながらページを繰るうちに、不思議と各部屋に大きな夢が詰まっている様な、生き生きと活力に満ち溢れている様な魅力が感じられ始め、胸に温かいモノ・熱いモノが、ポッと灯る様な気がする。
何より、ともすれば、ただ雑然としただけの狭い部屋にしか見えなくなってしまいそうな所を、一部屋一部屋にどこかその住人の魅力を感じさせるように撮影し、文章を構成した出版社の頑張りも伝わって来て、二重に面白い一冊だ。
この出版社の本は、内容もさることながら、装丁や紙の切り方が凝っている物があるので、読むだけでなく、コレクターズ・アイテムとしての本としても面白い。
出版社:雷鳥社
書名:東京貧乏宇宙
著者:Beretta P-09
価格:1,575円(税込み)
(羽田書店 安武祥吾)
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