筆者はファミリーレストランのすかいらーく・グループの一族に生まれ、飲食業界の表裏を見て育ち、「ザガット・サーベイ」を本邦初翻訳した方です。
それだけに、食にこだわり、食に精通し、様々な場面で食に関するエッセイを発表されています。通風持ちでレバーは最も忌避すべき食材にもかかわらずに舌鼓を打ち、「いやあ、旨いものは身体に悪い。(中略)白レバー+ビールが通風には史上最強の敵であるが、味的には至上のマリアージュという他ない。」などと描写する辺りに、筆者の食への並々ならぬ愛を感じさせます。
「恐慌下における~」と題名だけ読むと、何やら理論的で固そうです。
ところが、いざ本を開き、読み出してみると、そこには素晴らしい美味なる料理と、迷わず出かけたくなる魅力的なお店の数々、何よりそれらの人生の楽しみを紹介してくれる、ユーモアとウィットに富んだそれ自体が心に美味しく楽しい、簡潔にして実り豊かな文章が溢れています。
「温泉に入れば、『え~湯だな~』と声が出る」、そんな“え~”お店・料理がふんだんに紹介された本作。“やきとり”・“肉料理”・“鍋”・“エスニック”・“立ち呑み”など全十章・50店舗が5ページ前後で紹介され、ユーモアに思わず笑いがこぼれ、臨場感に溢れ、詩的とさえいえる表現で紹介される料理達に、思わずよだれがこぼれそうです。
「さえずり、食道、赤肉、本皮を煮え立つ鍋に入れる。我らが先祖の豪壮なる捕鯨シーンが、ふと頭をよぎる。きっちり味をつけ、味的胃袋的に十分な満足を得るが、食後感はライトである。」・・・、などなど、さっとページを開けば、そこには軽快で楽しく、しかも美味しい文章が常に待ち受けています!
「心までは不景気にしない」、美味しくも素敵な一冊。電車内などで読む際は、よだれとお腹の音に、くれぐれもご注意いただきたい一冊です。
出版社:講談社書名:「恐慌下におけるA(え~)級の店選び究極の法則」著者:横川潤価格:920円(税込み)(羽田書店 安武祥吾)
売れ筋の本からマニアックな専門書まで、本のことを知り尽くしている書店員さんがオススメの本を紹介する読書日記。書評だけでなく、時には誰も知らない書店の裏話などが聞けることも!?読書好きな人必見のブログです。
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