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 第十回小学館文庫小説賞受賞のこの作品。静かで温かい世界に溢れている…。

 主人公栗原一止(くりはらいちと)は地方の病院に勤務する五年目の内科医。しかも病院内ではあまり有難くない異名までつけられて
いる。その名も“引きの栗原”。彼が救急の当直に出た日に限って、重症患者の数が多いというのだ。おまけに、話し方がちょっと!?古風である。なんでも、夏目漱石を敬愛しているから…らしい。そして山岳写真家の細君を
最も愛している。

41nb6ls7e1l__sl500_aa240_  そんな彼の周囲には個性の強い人達ばかり。超ベテランの先生方に学生時代からの腐れ縁の同僚。独身・有能・美人な救急部看護師長。万年医師不足のなか彼らは「あらゆる事態に対応するのが地域医療の基幹病院としての
義務である」という理念に基づき、日々治療にあたっているのだ。

 そんな中、安曇さんという一人の患者を担当することになる。彼女とのやりとりのなかで、地域医療の大きな問題やこれから自分はどう進むべきなのか、といった思いが募る。そして、一つの結論がでる…。

 読み終えた時、とても真摯な気持ちになった。著者が伝えたいこと、それがまっすぐこちらの心に届く作品なのだろうと思う。

 医者は患者を、患者は医者を想い合い、そこから生まれる医療こそ、最終的な結果はどうであれ、互いにとって納得できるものなのではないだろうか…。そんな形の医療があっていい。私だったら、そういう医療を選びたい…。

 そう思った。

出版社:小学館
書名:神様のカルテ
著者:夏川草介
定価:1,260円(税込み)

(紀伊國屋書店宇都宮店 髙野典子)

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