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書店員のオススメ読書日記

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Photo_2 本書は東野圭吾の“加賀恭一郎シリーズ”最新刊。エキセントリックな魅力の“ガリレオ探偵・湯川シリーズ”に比べて地味だと言われがちだが、推理好きにはカミソリのような頭を持つ加賀刑事のファンが多いと思う。今回、そのクールな加賀が挑むのは「人情」。

 東京で、一番秘密の多い町はどこだろう?
 混沌の町・歌舞伎町?最先端のIT企業が集まる汐留?いや、下町・日本橋なのである。

 誰もが顔見知りで育ちや家業をよく知っており、だからこそ、言えない約束や隠れた想いを秘める。それが下町だ。

 この町には新参者が二人いる。一人は殺人事件の被害者、もう一人は刑事。

 犯罪により、傷ついたり何かを背負ったりするのは遺族だけではない。被害者がよく買い物をしていた商店の奥さん、散歩途中に日々たわいのない会話をしていた老人、奇妙なほどやさしい眼差しを送られていた喫茶店の女の子etc、人の死は思わぬ余波でまわりの人々の日常に、秘密の発生や嘘の暴露をもたらす。

 刑事・加賀は軽やかに町を歩き回りながら、事件解決に頭を働かせるだけでなく、これらの人々が被った小さな苦しみをも救おうとする。この作品からいきなり読んでもじゅうぶん面白いし、長年のファンは加賀にこんなひょうひょうとした一面やぬくもりある心の襞があるのか、と新鮮に驚くだろう。

ぜんぶで9章から成る物語だが、章が短篇としても楽しめる。連作短篇でありながら長編でもある、というのは案外むずかしいものだが、この作品はそれに成功した稀有な出来。ひとつひとつの風景を楽しみつつ大きな川を下っているような、小説の芳醇がここにある。

(青山ブックセンター六本木店 間室道子)

出版社:講談社
書名:『新参者』
著者:東野圭吾
定価:1680円(税込み)

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