高校時代、熱血教師が机の奥から取り出して「読みなさい」と私に貸してくれた「豆腐屋の四季」は、あっという間に私の心をつかんだ。返却してからもその鮮烈な印象は私の心に残りつづけ、入手しようと探していたがかなわず、このたびやっと復刊した。
母の死と自らの病気のため進学をあきらめた作者は、弟妹と父のため、家業の豆腐屋を継ぐ。昭和40年代の田舎町で、生きるということの困難さ、厳しさを短歌と文章に綴る。時には自分の無力さに夜空を見上げて泣き、運命を呪い、家族への深い愛情を噛み締める。松下竜一という才能が短歌と文章に溢れ出ており、貧困とはどういうものか、苦しみの中に生まれた短歌という希望が、どれほど作者を支えつづけたかを痛いほど感じる。
まだ明けきらぬ夜空を見上げ、身を切るような冷たい風の中で、未来を憂いた松下竜一のすべてが、この作品に詰まっている。あの時代をすごした諸先輩方も、貧しさの意味すら感じられない若者も、ぜひ手にとって欲しい。厳しい労働の中で少しだけ感じる希望、「生きる喜び」の大切さを知ることができるだろう。
(リブロ別府店 祐保博美)
出版社:講談社書 名:豆腐屋の四季著 者:松下竜一定 価:1,680円(税込み)
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