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4253075347_s_3 中世ヨーロッパでは、王権をはるかに凌駕する貴族・教会勢力に対して、牛の歩みにも似てゆっくりと何世代もかけて王が権力を伸長させていったようです。

 「アルカサル-王城-」は、14世紀未だ統一されていなかった現スペイン地域最大の王国・カスティリアに生まれた主人公“ドン・ペドロ1世”の熱く激しく濃密な一生が描かれた作品です。作者は、女性向けコミック誌で執筆するも、「ゴルゴ13」ばりの社会考証がされていそうな“スパイ・アクション・コメディ”を描くなど、女性向けという範疇を大きく越えて活躍するベテラン・青池保子さん。

 王として即位後、イベリア半島統一を目指し、巨大な勢力を持ち王権を妨げる大貴族達や前王の庶子をはじめとした王権を我が物にしようとする王族達と激しい抗争を繰り広げます。

 面従腹背の貴族達の叛意、彼等をそそのかし、自らは隣国の王と結んでドン・ペドロの王冠を奪おうとする異母兄との生涯にわたる確執など、権謀術数戦争が渦巻きます。

 その一方で、多くの女性達と浮名を流し、教会から破門されるなどスキャンダルも度々起こしつつ、愛妻家でもあり、“審判王”と後におくり名されるなど、苦しむ人々には公正で寛大な王であった事をうかがわせるエピソードが描かれるなど、わずか34年の生涯にも関わらず、非常に濃密な物語が展開されます。

 女性向けコミックらしく、背景に大輪の花々が咲くかと思えば、表紙の絵のように非常に躍動感溢れる丁寧な絵が画面を飾り、スペインの荒野を行く大騎馬軍団や攻城兵器軍の進軍や戦闘場面は手に汗握る迫力の筆致であり、宮廷や恋模様を描く場面は華やかで緻密であり、シリアスとコメディの緩急つけた描写も楽しく、脇を固める人物達にも悲喜劇合わせた魅力的なエピソードが溢れており読み応え充分!

 文庫版が刊行中ですので、この機会に未読の女性も男性もご覧いただければ幸いです。

出版社:秋田書店
書名:アルカサル-王城-
著者:青池保子
価格:新書版410円~600円(税込み)、文庫版735円(税込み)

(羽田書店 安武祥吾)

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