“人生は、どうしても妥協するわけにはいかない本質的に大切なものがすこしと、いいよ、いいよ、そんなことはどっちでも、で済むようなことがどっさり、とでなりたっていて、それを理性でひとつひとつ見きわめながら、どちらかをえらんでいくものだ”
何年か前の日記に書いた文章だ。この日記帳を読み返すたびに、誰の言葉だろうと思っていた(ズボラな私は出典を書いていなかった)。今回、本書でこの文を発見して『やっぱり!』と嬉しかった。
須賀さんが通っていたミッションスクールの修道女が、教会の方針に従ってそれまでの修道服から「ふつうの」服装になった。後に須賀さんの大切な友人になるある修道女は、“その「使用前・使用後」の時期の精神的な落差が”“ほとんど感じられなくて”須賀さんは彼女を尊敬し、そして冒頭の感慨につながっていくのである。
もちろん、須賀さんも“本質的に大切なもの”が分かっていた人だろう。イタリア、家族、友人、本、書店…この本には彼女が愛したものたちの事が、驚くべき記憶力で、ていねいに書いてある。それは、あれもこれもと欲張り欲しがって、こだわって、身動きがとれなくなった私をスッキリさせてくれた。
(リブロ福岡西新店 奥原未樹子)
出版社:河出書房新社書 名:須賀敦子全集 第1巻著 者:須賀敦子定 価:998円(税込)
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