すでにメディア各方面で取り上げられ、評価も定まった感がる本作だが、全3部作で都合6冊、相当骨が折れそうなボリューム、しかも馴染みの薄いスウェーデン製、頭に入りそうにもない登場人物の名前、そんな悪印象は、読み進むにつれて何処へと、この重量感、面白さは只ごとではない。
エチケット違反になるのでストーリーは詳述できないが、第1部の仕立ては本格ミステリー、密室モノと言って良い内容だが、その謎解きを主旋律に、伴奏に「ミレニアム」という雑誌を舞台とした、ジャーナリストと悪辣な大企業経営者との闘いを置き、それぞれが絡み合いながら重奏的に物語を紡いでいく。
実は、この作品を魅力的にしているのは、ダイナミックな構成や、絶妙なストーリー運びは勿論であるが、重要な登場人物、主人公のジャーナリストの闘いを助ける、リスベット・サランデルという謎多き女性ハッカーの存在である。とてつもなくインモラルな匂いをさせながら、しかもイリーガルに活動する、その彼女の際立ったキャラクターが素晴らしい。彼女こそが実は正義、という倒錯に陥らざるを得ない、そんな魅力がある。気が強いだけではなく、滅法喧嘩も強く、しかもとてつもなく頭が切れる、一方で、孤独と繊細な感情が同居するという、不思議な魅力に溢れたキャラクターである。淡く描かれる彼女の恋心の断片とその儚さが、象徴的に表される印象深い場面もある。
第2部以降、彼女の出自の秘密が明かされていき、同時に、第1部の本格ミステリーから、いわば国際謀略的サスペンスへと趣きを変え、物語は進んでいくが、国家をも巻き込んだ巨大な陰謀と対決していく彼女の姿からひと時も目が離せない。
3部作を読み終えた誰もが望むであろう続編は、残念ながら作者が急逝したために(4部の草稿はあるらしいが)、世に出る可能性はないようだ。ともあれ、まぎれもなく、2009年最大の収穫と言って良い作品であることは間違いない。
(ケイ・コーポレーション営業部商品課 黄木宣夫)
出版社:早川書房書 名:ミレニアム 3部作著 者:スティーグ・ラーソン定 価:各1,700円(税込)
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