「白い紙」はテヘランからイラクとの国境の町へ、父親の仕事の都合で引っ越してきた少女の話である。イラン・イラク戦争の戦時下で、少女は自分たちの未来を想像する。私たちに未来があるのだろうか。あるとすれば、どのような未来であるのか。担任教師が言うように私たちの未来は真っ白で、頑張れば未来を変えられるのだろうか。
表立って男女が会話することも許されない風土の中、少年と心を通わせる少女。喜びもつかの間、郊外にも戦火は近づき、やがて少年は大きな決断をせまられる。未来とは何か、自分とは何か、家族とは何か。短い文章の中に、深い問いかけが含まれている。国の未来と個人の未来、本来なら比べようもないはずのものが、乱暴に比べられていく現実。
戦時下の緊迫感の中ではあるけれど、年頃の少年少女が同じ学校に集まれば、手洗い場で水をかけあったりする。そんな日本でもよく見られる光景にこそ、生きるという一瞬の輝きが垣間見える。おかれた環境が違うだけで、人は何かを諦めつづけねばならないのだと痛感する一冊です。同時収録の「サラム」も秀逸。
(リブロ別府店 祐保博美)
出版社:文芸春秋書 名:白い紙/サラム著 者:シリン・ネザマフィ定 価:1,300円(税込)
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