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書店員のオススメ読書日記

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Htbookcoverimage_4 おそらく佐伯泰英を猛追している作者でもあり、すでに多数の読者を得た、今一番の注目の正統「娯楽」時代小説家である。本書はシリーズ第五弾目。

 ここまで興味を引くお膳立てもないであろう。江戸時代後期、下っ端旗本の部屋住み次男坊で若き剣士である柊衛悟が、ふとしたことから、幕府の重要人物と関わり合い、彼を狙う忍者の末裔、剣のライバル達、理解ある師匠、影ながら心を寄せる幼馴染・・・。

 幕府の権力闘争に揉まれながらも、柊の存在は爽やかである。そして、柊が警護し隣家に住む、幕府の重要書類の決裁に関わる「奥右筆頭」の立花併右衛門は、権力の圧力にさらされながらも、柊の成長にも一役買う。柊の剣の師匠・大久保典膳や、二人を襲う甲賀のはぐれ者で居合いの達人・冥府防人、なぞの願人坊主・覚蝉は不思議な味を作品に添える。今回も陰の主役、将軍家斉の父・一橋冶済は、本来は大名であるはずが、大名になれない御三家付け家老達の無念を操り、幕府へ圧力をかける。

  また翻弄される柊と立花。だが困難に立ち向かう二人は、身分、気質も違いながら互いの信頼を深め合う。長く続き硬直した江戸幕府の矛盾を突き、物語を進ませる著者の技はさすが。人を斬り戦いながらも、柊は一本気の純なままである。

彼がこれから言い知れぬ陰が出来た頃、この物語は成熟を迎えるのではないだろうか。

出版社:講談社
書 名:簒奪 奥右筆秘帳
著 者:上田秀人
価 格:650円(税込)
(大盛堂書店 山本亮)

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