久々に大型の話題先行型出版である。
何から何まで、邪推をすれば「仕掛け」と取れる展開で生み出された本書を、人々はどう読むのか。現時点で刷部数は68万部、書店は品切れ店続出という状況である。本稿がアップされる頃には、すっかりブームは落ち着いているということもありうる。書店員としては単純に、ブームは続いてもらいたいところではあるが。
タレントエッセイの類であれば、珍しくなく、最近ではお笑い系芸人の小説がベストセラーになったりすることもあり、俳優が書いた小説本で驚くことはない。一般に向けてオープンな文学新人賞での受賞、話題の中心はこれに尽きるのだが、本人が人気イケメン俳優であり、血統書付きのような出自で、最近所属事務所から馘(?)になったり、人気シンガーソングライターと結婚したり、彩る話題の華やかさが、先行する話題を厭が上にも増幅した、のである。
さて、作品そのものの価値は如何に。
あるデータによれば、中心の読者は、40代の女性である。その次が20代、男女比較すると女性が圧倒的である。この読まれ方は即ち、水嶋ヒロの支持層そのままである。とすると、飛びついた読者の大多数が、芸能週刊誌的興味が理由でと読め、文学作品として評価されるかどうかは、これから百出する論評の内容で実証される。
ネタばれになるのでストーリーには触れないが、スラスラ読め、「金返せ」でもなく一定の水準を満たしている作品(コンクールの大賞なのだから当然?)であるのは間違いない。だか、如何せん、新味はない。鳴り物入りのデビューであれば、敢えてより冒険があっても良かったのではないか。とはいえ一方では、それで大多数の支持が得られるかという問題にもなる。沈滞した出版界に一石を投じたという意味では、紛れもなく価値はあるのだが。まずは、読んでみて、と言いたい。
(ケイ・コーポレーション 営業部 商品課 黄木宣夫)
出版社:ポプラ社書 名:KAGEROU著 者:斎藤智裕定 価:1,470円(税込み)
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