映画にはジャンルというものがあり、これは好き好きの基準として語られることが多い。アクションものが好きな人、恋愛ものが好きな人、お笑いものが好きな人とか、実際は作品の要素は様々重なり合っているので、ある傾向に拠って好みが発生する、ということかも知れない。一方、二元論的に言えば、芸術的かそうでないか、という基準がある。娯楽作か否かという表現もできる。しかし、これも上記同様に、作品の要素を考えれば、一刀両断には出来ない。そうなのだが、人は分類したがる。恐らく、その作品を語る上で便利だからに違いない。感想を求められ、良かったか否かだけでは芸がない。どう評価に値するのか、を説明するとすれば、基準に照らす必要がある。基準に照らして上位か下位かが単純に説明の軸になり、更にその基準の前提が、その作品がどのジャンルに属する作品であるか、ということになる。
本書は紛れもなく映画を論評したものだが、触れ込みは、映画を論ずることで哲学(構造主義)について解説することを意図しているという。映画論を期待している読者にとっては、ここでやや腰が引けるところであるが、
心配は杞憂である。ここには、目から鱗の斬新な作品の見方への導きがある。何しろ、取り上げられているお題が、「エイリアン」「大脱走」ゴーストバスターズ」「北北西に進路を取れ」など押しも押されもしない何度観ても面白い、超娯楽(芸術的な鑑賞眼ではいろいろいちゃもんがつきそうなという要素も充分ある)作品である。そうか、こんな見方があるのか、映画評論家の観方が、実はその作品を論ずる上で正鵠を射ていないのでは、と思わせるくらいの鋭い分析である。下手をすると穿ち過ぎと取られかねないが、はたと腑に落ちる知的好奇心をそそられるものとなっている。
これらの作品を、また観たくなること請け合いである。
(ケイ・コーポレーション 黄木宣夫)
出版社:文藝春秋
著者:内田樹
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