ある大手出版社に勤める男は、営業職としてうだつのあがらない日々を送っていた。その名も馬締(まじめ)。人とは違うところに気づき、こだわる。言葉のセンスも変わっていて、そこに辞書の編集をしていた退職間近の社員が目をつけ、辞書編集部に異動となる。
たった一つの言葉を表現するために、あらゆる方向から検討する。わかりやすい凡例のため手間を惜しまない。単語の用例採集カードを常に携帯し、食事中でもメモをする。人としての日常生活の全てを辞書に捧げる男たち。辞書編集部には、あまりに個性的すぎる面々が揃っていたが、やがてその多様性があるからこその反応を見せ始める。お互いを思い、辞書に全力で情熱を注ぐ姿に胸を打たれる。
言葉のもつ力は壮大である。その意味は一つ二つではなく、前後の文脈、使う人や相手の感情や思い出によって、大きく広がり、深みを持つ。過去と未来をあっという間に繋げ、眼に見えないものこそ言葉が表現してくれる。言葉の重み、その言葉が詰まった辞書、そしてあらゆる種類の本。その全てを誰かに伝える書店員という仕事の重み、そして素晴らしさを改めて実感した。一緒に言葉の海にたゆたいながら、登場人物たちとともに一喜一憂してみませんか。
(リブロ別府店 祐保博美)
出版社:光文社定 価:1575円(税込み)
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