河村常雄の劇場見聞録

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Kao <見>流山児祥が3年の期間限定で立ち上げた高齢者劇団パラダイス一座の第2弾、「続オールド・バンチー復讐のヒット・パレード!」が、12月12日から21日まで東京のザ・スズナリで上演された。
 佃典彦作、流山児演出。東京五輪の前年に内部抗争で死んだ仲間の葬儀に集まった5人の暗殺者の物語だ。
 5人は老人になり、現代とのギャップに悩みつつも意気盛ん。時に歌い、時に歌舞伎調のせりふを語り、笑いの連続。
 最も感心したのは暗殺者を演じた5人の「高齢」役者の味わい深さだ。
文学座の演出家、戌井市郎、91歳。
 青年劇場の創立者、瓜生正美、83歳。 

 守備範囲の広い演出家、中村哮夫、76妻。
 本多劇場経営者で近年、俳優活動の目立つ本多一夫、73歳。
 「ドラえもん」の初代スネ夫の声優で、俳優、演出家の肝付兼太、72歳。   
 全員70歳超で、肝付以外は、演劇界の大物ながら、役者としては素人に近い。
 しかし、人生の年輪が曰く言い難い味を滲ませる。名優の名演にはない味だ。
 ほどなく彼らに追いつく団塊の世代に、大きな勇気を与えた一作。
 40年もの長きにわたりアングラ、小劇場で暴れてきた流山児は、「演劇界の楽道を見つけた」とうそぶく。
 自慢していい。快挙だ。拍手を贈る。
<聞>ザ・スズナリの客席で戌井市郎にインタビューした。
――戌井さんの役は、暗殺者協会の元会長。ドスがきいていました。演出家が役者として舞台に立った心境は。
 「戦争中など役者が足りなくて舞台に出たことはありますが、演出家としては舞台は役者がやらなければいかんと思っていました。ただ、80歳過ぎたころから、芝居で別のことをやれないかなと思うようになって、そのうち流山児さんから話しが来ました。やれるのかな、せりふは覚えられか、声は出るかとか不安はありましたが、去年出てみました。まあ、何とか声も出ました。声を出すということは健康にもいいことですしね」
――演出家として役者に注文する立場でしたが、今回は注文される側です。
「演出家のいう通りやろうと思って臨んだのですが、それなりの役、それなりの年を演じてほしいということで、あまり難しい注文はでなかったですね。演出家の言うとおりやっていると楽しくなっちゃいまして。それが芝居のパラダイスというここの狙いでもありまして、楽しくやらせてもらいました」
――今年は「白浪五人男」の日本駄右衛門のようないい役でした。
「去年は無我夢中でしたが、今年は余裕をもって取り組もうと思い、また、(歌舞伎座「ふるあめりかに袖はぬらさじ」の演出など)仕事が重なったこともあり、(作者の)佃さんに、少ないせりふでいい役をお願いしますと頼んだんです。そしたらもうけ役がきました」
――ほかの出演者のせりふに、記憶との戦い、という一節もありましたが、覚えるのに苦労しましたか。
 「苦労しましたけどね、それを苦労とは言えません。当たり前のことですから。ただ、全部満足に言えたことはないですね」
――文学座創立当時以来の舞台ですか。
 「その後、50何年か前に出ていますが、それも人がたりないから出たようなもので」

●役者に芝居の醍醐味
――それ以来演出する側。久々に演出される側に立って、演出者の言っていることが分からないというようなことはありましたか。
 「いや、分からないことはなかったですね。しかし、演出する側は分かりよいようにしなければ、と思いました。流山児さんの言うことが分からないのではなく、役者の身にならなければいけないということです。演出は想像してイメージの中で描いているが、自分の体で表現することが芝居の醍醐味です」
――やはり芝居は舞台に立たなければいけないということですね。
 「そうなんですよ」
――「地上の星」を歌う場は照れていたように見受けましたが。
 「カラオケにも行ったことはないし、去年は出演者の趣味を見せるところがあって、僕は新内のひとくさりやりましたが、今回のようなみなさんの歌う歌は不慣れで心配でした」
――暗殺者協会の元ボスはいい役ですね。
 「年だからかいい役で、申し分けないと思います。ただ、せりふが少ないので黙っているだけで見せなければいけない。ハラ芸が必要な役です」
――これからも舞台に立ちますか。
 「健康でなければできないし、健康であることがありがたい。できれば続けたいですね」
――島田正吾さんは95、6歳まで舞台に立っておられた。目標にしていますか。
 「いや、そこまでは。ただ文学座とは違うジャンルの芝居なので面白い。 「来年、『鹿鳴館』を演出しますが、三島由紀夫と最初に上演したころのせりふ、エスプリをそのまま守って伝えたい。それはそれとして、今回のようなものも手がけていきたいと思っています」
――ありがとうございました。
(写真は、戌井市郎=撮影・飯田研紀)
 

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 <見>歌舞伎や能楽、文楽、邦楽、舞踊、そして新劇、ミュージカルなどあらゆる分野の劇場公演の中から、「面白い!」と思ったものを紹介します。従って、褒め上げる記事ばかりです。 <聞>出来るだけ、出演者やスタッフに「面白い!」わけを聞き、紹介します。

河村 常雄

 1973年入社。水戸支局、整理部(現・編成部)の後、学生時代より歌舞伎に興味を持っていたことから芸能部(現・文化部)に移る。演劇担当、デスクを経て、専門委員。この間、文化庁芸術祭・芸術選奨の演劇部門審査委員、鶴屋南北戯曲賞選考委員などを歴任。現在、読売日本テレビ文化センター勤務。著書に「かぶき立ち見席」(演劇出版社)。

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