河村常雄の劇場見聞録

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●実に海老蔵の時代
<見>海老蔵が昼の部「源平布引滝」三幕、「枕獅子」、夜の部「加賀見山」「かさね」のうち、義賢、実盛、与右衛門を演じる。目立つ役ばかりで、まるで海老蔵公演の趣。1月はこの劇場で座頭を勤めている。実に海老蔵の時代。

 「義賢最期」はやや若過ぎのきらいもあるが、この人は若いにもかかわらず、声といい押し出しといい重量感がある。ただ、仏倒しはもっと思いきりよく、胸から倒れていくべきだろう。そうしないと却って危ない、という話を聞いたことがある。
 「竹生島」「実盛物語」の実盛は生締めが似合い、立派である。ほれぼれする。正義漢と愛情が漂う。物語に研鑽を積んでほしい。
 正義漢と愛情の表現を評価したが、悪を堂々と演じきれるのも、この人の天賦の才。与右衛門である。人妻と密通、その夫を殺害、娘かさねに身ごもらせる。不敵な眼光に、骨太の色悪が宿る。舞踊のマイナス部分を引いても、今月一番いい。上。

 手薄な脇役陣にあって最も光るのは、「実盛物語」で瀬尾を演じた市蔵か。憎々しさと娘や孫を思う心も確かで、絶命するときの座ったままの前転、兵馬返りが小気味いい。25日まで。

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 <見>歌舞伎や能楽、文楽、邦楽、舞踊、そして新劇、ミュージカルなどあらゆる分野の劇場公演の中から、「面白い!」と思ったものを紹介します。従って、褒め上げる記事ばかりです。 <聞>出来るだけ、出演者やスタッフに「面白い!」わけを聞き、紹介します。

河村 常雄

 1973年入社。水戸支局、整理部(現・編成部)の後、学生時代より歌舞伎に興味を持っていたことから芸能部(現・文化部)に移る。演劇担当、デスクを経て、専門委員。この間、文化庁芸術祭・芸術選奨の演劇部門審査委員、鶴屋南北戯曲賞選考委員などを歴任。現在、読売日本テレビ文化センター勤務。著書に「かぶき立ち見席」(演劇出版社)。

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