河村常雄の劇場見聞録

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三代の政岡を逢えた慶び
<見>最近、「実に海老蔵の時代」などと書いたばかりだが、今月の夜の部の通し「先代萩」を見ていると、海老蔵、菊之助に松緑、獅童、愛之助ら戦後第三世代の時代の到来を感じざるを得ない。歌舞伎は次の時代につながる。滅びないと考えていい。
ちなみに、筆者の考える戦後第一世代とは先代勘三郎、先代幸四郎、歌右衛門、梅幸、十三代仁左衛門ら戦後大成した名優たち。第二世代は、その子息にあたる当代の菊五郎、幸四郎、吉右衛門、団十郎、仁左衛門らである。
 「御殿」で姦計から幼君を守る乳人政岡は菊之助。みずみずしいことこの上なし。31歳で史上最年少の政岡という。重み、深み、技巧は今問うべきではない。ほかに、観客を楽しませてくれるものがある。
彼の祖父・梅幸、父・菊五郎の名演を見ているから、これで三代の政岡を見たことになる。
 梅幸の政岡は晩年だったためだろう、重厚で貫禄があり、慈愛と包容力に満ちていた。「慈母」であった。
 菊五郎は、正義感が舞台を支配し、悪臣を懲らしめるお家物そのものであった。梅幸より歌右衛門に近い。「鉄母」とでもいおうか。
 菊之助の政岡は幼子を持つ若妻。まだ顔が細いためか、片外しが大きく感じる。あふれる優しさは、「聖母」の如し。
 父、子、孫と直系でありながら、かくも異なる味わい。現役の菊五郎、菊之助の政岡はこれからどう変化していくのだろうか、興味は尽きない。歌舞伎の面白さはここにもある。
 奸臣仁木弾正は海老蔵である。昼の部の「伊勢音頭」の貢は、「ぴんとこな」の和事味が出ないだめ、まだまだ勉強中と言わざるを得ないが、こちらは立派。「床下」に不気味さ、国崩しの大きさ、「刃傷」に凄みがある。菊之助同様、時代物と互角に戦い、若さがマイナスになっていないのがいい。 
 松緑の勝元。昼の部「吉野山」は踊りの上手さもあり感心したが、ここは観客に清涼感を与えるには至らない。獅童は荒獅子男之助。「伊勢音頭」の奴林平に比べるとやりやすそうだが、正義感に乏しいのが難。愛之助は女形の敵役・八汐で大健闘。「伊勢音頭」の料理人喜助ですっきりした立役ぶりを見せた。大活躍。25日まで。

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 <見>歌舞伎や能楽、文楽、邦楽、舞踊、そして新劇、ミュージカルなどあらゆる分野の劇場公演の中から、「面白い!」と思ったものを紹介します。従って、褒め上げる記事ばかりです。 <聞>出来るだけ、出演者やスタッフに「面白い!」わけを聞き、紹介します。

河村 常雄

 1973年入社。水戸支局、整理部(現・編成部)の後、学生時代より歌舞伎に興味を持っていたことから芸能部(現・文化部)に移る。演劇担当、デスクを経て、専門委員。この間、文化庁芸術祭・芸術選奨の演劇部門審査委員、鶴屋南北戯曲賞選考委員などを歴任。現在、読売日本テレビ文化センター勤務。著書に「かぶき立ち見席」(演劇出版社)。

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