河村常雄の劇場見聞録

本文です
前の記事

光る第一部木場、第三部中嶋
Photo <見>東京・新国立劇場中劇場でシェークスピア長編史劇「ヘンリー六世」の一挙上演を始めた。
 三部構成で、第一部「百年戦創」を27日、第三部「薔薇戦争」を29日に観た。第二部をまだ見ていないので作品全体の論評は避けるが、今年の演劇界最大の成果になりそうだ。
 15世紀の英国で執拗に繰り返されたランカスター、ヨーク両家の攻防を、あきさせることなくたたみかけるように展開させる鵜山仁の演出。俳優のせりふを粒だたせる小田島雄志の訳。布の柔らかさ深みを生かした左右非対称の抽象的な島次郎の美術。そして、俳優の情熱。すべてが相乗効果を上げ、舞台を高めた。

 第一部で光ったのは、フランス軍と戦い戦死するトールポット卿の木場勝己である。低音の効いた重厚なせりふ術でシェークスピア劇のせりふを生き生きと伝える。死を覚悟した戦場で息子に逃げることを命じる場面がいい。武人の誇り、父子の情が感動を呼ぶ。第一部の主役の働き。

 第三部はヘンリー六世の弱腰に業を煮やし、兵を起こす妃マーガレットの中嶋朋子がいい。女の強さ、怖さ、いとおしさ、哀しさをあますところなく出し、芸域を広げた。リチャードの岡本健一は、屈折した野心に怖さを漂わせる。ウォリックの上杉祥三も達者なところを見せた。

11月23日まで。
(写真は木場勝己=右端)谷古宇正彦撮影、新国立劇場提供

 

前の記事

 <見>歌舞伎や能楽、文楽、邦楽、舞踊、そして新劇、ミュージカルなどあらゆる分野の劇場公演の中から、「面白い!」と思ったものを紹介します。従って、褒め上げる記事ばかりです。 <聞>出来るだけ、出演者やスタッフに「面白い!」わけを聞き、紹介します。

河村 常雄

 1973年入社。水戸支局、整理部(現・編成部)の後、学生時代より歌舞伎に興味を持っていたことから芸能部(現・文化部)に移る。演劇担当、デスクを経て、専門委員。この間、文化庁芸術祭・芸術選奨の演劇部門審査委員、鶴屋南北戯曲賞選考委員などを歴任。現在、読売日本テレビ文化センター勤務。著書に「かぶき立ち見席」(演劇出版社)。

      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29