河村常雄の劇場見聞録

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明治座「細雪」

2010年1月20日

0001 <見>咲き誇る桜のように華やかで、ハラと散る桜のように涙を誘う。
谷崎潤一郎の同名小説を菊田一夫が脚色、繰り返し上演されている名作舞台。今回は堀越真潤色、水谷幹夫演出である。
  軍靴の響きが次第に高まる昭和初期、旧幕以来続く大阪・船場の豪商・蒔岡家の四姉妹の波乱を家の没落とともに描く。
 一家に君臨する長女・鶴子に高橋惠子、分家しても実家や姉妹を気遣う二女・幸子に賀来千香子、優柔不断でなかなか嫁ぎ先の決まらない三女・雪子に紺野美沙子、跳ねっ返りの四女・妙子に藤谷美紀の配役。
 幕あきからブランデンブルク協奏曲が流れる。宮廷を連想させる。すなわち庶民感覚からかけ離れた雲上人のような世界の話である、と予告しているのだ。
 難しいのは長女と三女。
長女はしっかりしているようで世間知らずのお嬢様でなければならない。しっかりしていると、哀しみも小さく、「嵐山の桜や箕面の紅葉がみられないところは、みんな田舎や」のせりふが生きない。
昭和の「細雪」では淡島千景が、昔気質で気位高く、しかも明るくてどこか抜けているところが自然に出ていて、抜群によかった。その後、筆者が見る限り長女は理知的な女性になっていた。が、今回の高橋の長女には愚かさものぞいていた。今後に期待したい。
 三女は何かにつけ、「ふうーん」と曖昧な返事をするお嬢様。かつて遙くららはこの「ふうーん」のうまさで客席を沸かせたが、紺野もそれに近く、上出来。
 船場のぼんぼん高畑の太川陽介が軽妙な敵役で笑いをとる。長女、二女の夫役の磯部勉、篠田三郎もそれぞれ、存在感と重みを出している。
女中頭お春の有沢比呂子ら脇役陣も生き生き演じ、舞台にスキがない。
19日所見。
――28日まで。
(写真は「細雪」)=明治座提供

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 <見>歌舞伎や能楽、文楽、邦楽、舞踊、そして新劇、ミュージカルなどあらゆる分野の劇場公演の中から、「面白い!」と思ったものを紹介します。従って、褒め上げる記事ばかりです。 <聞>出来るだけ、出演者やスタッフに「面白い!」わけを聞き、紹介します。

河村 常雄

 1973年入社。水戸支局、整理部(現・編成部)の後、学生時代より歌舞伎に興味を持っていたことから芸能部(現・文化部)に移る。演劇担当、デスクを経て、専門委員。この間、文化庁芸術祭・芸術選奨の演劇部門審査委員、鶴屋南北戯曲賞選考委員などを歴任。現在、読売日本テレビ文化センター勤務。著書に「かぶき立ち見席」(演劇出版社)。

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