河村常雄の劇場見聞録

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劇団民芸「巨匠」

2010年2月 7日

<見>木下順二が「ジスワフ・スコヴロンスキ作『巨匠』に拠る」の副題を付けて1991年に民芸に書き下ろした戯曲。
 鉄道爆破の報復として学者や芸術家など知識人処刑を決めたナチスの前に、「巨匠」と呼ばれ揶揄されていた自称俳優が、俳優と認定されれば処刑されることを覚悟の上で名乗り出る。極限状況での人間としての生き方を問う作品である。
 初演で滝沢修が演じた「老人」を、再演以降は大滝秀治が演じている。
 
 滝沢は最初かた名優・巨匠の雰囲気を漂わせていたが、大滝はただの平凡な老人に見えた。しかし、ゲシュタポの前で「マクベス」のモノローグを、正に一命を賭して語り出すと名優に変身、俳優であると認めさせた。そして、満足して処刑の場所に向かう。

 民芸創立60年。大滝も俳優生活60年で85歳という。
 作中の老人は、浄瑠璃の「俊寛」のように他者の犠牲になるのではない。自ら俳優であることを主張するために死に赴く。役者冥利に尽きる役であろ。
 大滝の気迫を見ていると、もし彼が作品の状況に置かれたら間違いなくこの老人の如き行動をとるであろう。そう思わせる好舞台であった。
演出は内山鶉。
1月30日所見。
――9日まで俳優座劇場。

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 <見>歌舞伎や能楽、文楽、邦楽、舞踊、そして新劇、ミュージカルなどあらゆる分野の劇場公演の中から、「面白い!」と思ったものを紹介します。従って、褒め上げる記事ばかりです。 <聞>出来るだけ、出演者やスタッフに「面白い!」わけを聞き、紹介します。

河村 常雄

 1973年入社。水戸支局、整理部(現・編成部)の後、学生時代より歌舞伎に興味を持っていたことから芸能部(現・文化部)に移る。演劇担当、デスクを経て、専門委員。この間、文化庁芸術祭・芸術選奨の演劇部門審査委員、鶴屋南北戯曲賞選考委員などを歴任。現在、読売日本テレビ文化センター勤務。著書に「かぶき立ち見席」(演劇出版社)。

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