河村常雄の劇場見聞録

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  能舞台で展開する狂言のおかしさに、客席から笑いが絶えない。ただし、役者は声を出さず手話で語っている。セリフは客席後方の一室で狂言師が舞台の演者に合わせて語り、それがマイクを通して舞台から聞こえてくる。1月23日、東京・国立能楽堂で開かれた日本ろう者劇団の手話狂言である。
この劇団は女優・黒柳徹子さんが理事長を務めるトット基金の付帯劇団で、今年30周年。手話狂言は今回が29回目という。セリフが命ともいえる狂言にろう者がどこまで迫れるか、に注目しながら「墨塗」と「附子」を見たが、それぞれ「うその涙」と「うその脅し」という「うそ」の愚かしさをテンポよく笑い飛ばした。表情豊かで楽しく、裏で付ける狂言師の声ともよく合い、清々しい感動を覚えた。
 1983年のイタリア公演から指導し、声の出演もしている狂言師の三宅右近さんは、「ろう者であるという区別をせずに礼儀や動きの基礎から教えてきました」という。手話は手の動きが早いため、セリフと合わない。古典芸能の雰囲気にもなじみにくい。「そこで相談して古い手話を使って、ゆっくり演じて、狂言のセリフに合わせています」と工夫を話す。
 「ろう者の方にも狂言の面白さを知ってもらいたい」の一念で指導してきた右近さんも、「一般の狂言より分かりやすい」というアンケートの回答を見るとうれしくなるそうだが、ここらに伝統芸能普及のヒントが隠されているのかもしれない。

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 <見>歌舞伎や能楽、文楽、邦楽、舞踊、そして新劇、ミュージカルなどあらゆる分野の劇場公演の中から、「面白い!」と思ったものを紹介します。従って、褒め上げる記事ばかりです。 <聞>出来るだけ、出演者やスタッフに「面白い!」わけを聞き、紹介します。

河村 常雄

 1973年入社。水戸支局、整理部(現・編成部)の後、学生時代より歌舞伎に興味を持っていたことから芸能部(現・文化部)に移る。演劇担当、デスクを経て、専門委員。この間、文化庁芸術祭・芸術選奨の演劇部門審査委員、鶴屋南北戯曲賞選考委員などを歴任。現在、読売日本テレビ文化センター勤務。著書に「かぶき立ち見席」(演劇出版社)。

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