河村常雄の劇場見聞録

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片岡 孝太郎in南座

2012年1月17日

Photo <聞>京都・南座の新装開場二十周年を記念する顔見世公演(2011年12月26日まで)は、華やかな「寿曽我対面」で幕が開いた。曽我兄弟が父の仇・工藤祐経と対面する祝祭的な人気演目。兄・十郎を片岡孝太郎、弟・五郎を片岡愛之助の若手花形が清々しく演じ、工藤は片岡我當、小林妹舞鶴は片岡秀太郎の大ベテラン。松嶋屋勢が結集し、目出度さの中にも緊迫感のある舞台を作った。初役で十郎を勤めた孝太郎にインタビューした。

●立役にチャレンジ
――「対面」の十郎が決まったときのお気持ちは。
 「お話をいただいたときは耳を疑いました。というのは、顔見世で『対面』の五郎や十郎を演じるのは襲名など大きなイベントのときと思っていましたから。ただ、この作品に出るのは9回目なんです。八幡、化粧坂の少将、大磯の虎、舞鶴などに出させていただいています。そして、工藤に出ていた祖父{十三代目片岡仁左衛門}を思い出します」
――何度もこの作品に出演していますが、この作品に出るときの心構えは。
 「理屈をあまり考えず、様式美を見せるお芝居ではないでしょうか。長袴をはいていますので、それをきれいに見せることができればな、と思っています」
――江戸歌舞伎の作品の役を初役で演ましたが、稽古はどなたに。
 「今回は梅玉のお兄さんに教わりました。止める形や息継ぎ、気持ちなど、要所要所、細かく。梅玉のお兄さんは梅幸の小父さんに教わったそうです」
――女形の多い孝太郎さんにとって十郎という立役はいかがですか。
 「二十代半ばで女形に専念するようになってからは、立役を勤めるのは少なくなりました。数年に一回ぐらい。女形が立役を演じたときに独特のなよっとしたところが出る場合がありますが、私はそれが大嫌いで、やっぱり女形なんだなと思われないよう心掛けています。もともと家は立役の家系ですし、柔らかい物や前髪物などにはこれからもチャレンジしていきたいですね」

●立役と女形を演じ分ける役者に
――なよっとしないよう心掛けているそうですが、十郎は和事味がかかっています。なよっとしているところもありますね。
 「境界線ギリギリのところにあると思います。十郎は和事味のある優しい立役であり、男と女の境はキッチリやりたい。それを演じ分けられる役者になりたいですね」
――十郎の各部分を細かく伺いたいのですが、花道の出はいかがですか。
 「緊張しますね。三味線の糸に合わせて動きますので、僕がいいところまでいっていないと、五郎が出てきてぶつかってしまいます。(花道の)七三での五郎との入れ替わりも狭くて怖い。その狭い花道での長袴のさばきも気になるところです。ここでキチッと止める形が出来て、拍手をいただいて、そこから芝居が始まります」

●静の中に怒り
――十郎の性根というのは。
 「父の敵に対面が出来る。はやる気持ちはありますが、これから大事なことをひとつひとつクリアして仇を討とうとする。これは『静』ですね。はやる弟を、まあ待てと抑える」
――花道の七三で工藤をじっと見ます。
 「ああ、父の敵とはこいつか、と顔を見込みます。静の中の怒りですね。怒りをあまり表に出さないのが兄です」
――本舞台に出ると、敵の工藤の盃を飲み、緊迫感が高まりますね。
 「盃も飲む型と飲むふりをして飲まない型がありますが、今回の私は飲んでいます。冷静を装って飲む型ですね」
――そして、お年玉代わりに狩場に入る切手をもらいます。このときの十郎は。
 「切手というのは、今で言えば入館証。今なぜこれをくれるのか、と驚くわけですが、工藤は『切って恨みを晴らせよ、兄弟』と言ってくれる。しかし、それに対し、『言うにや及ぶ』と答えます。ですから、ありがとうという気持ちではないですね」
――最後は美しい絵面の見得で幕となります。
 「五郎・十郎・大磯の虎・化粧坂の少将・舞鶴で富士山の形ですから、きれいな富士山が描けたらという思いで演じています。緊張していますから、幕になるとほっとします。普段の女形とは違う筋肉を使うので、体が痛いですね」
――今、やり終えた気持ちは。
 「十郎をさせていただけるとは思ってもみなかったので、うれしいですよ。ましてや、伯父の工藤と舞鶴ですから」
――ありがとうございました。
(写真は片岡孝太郎)

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 <見>歌舞伎や能楽、文楽、邦楽、舞踊、そして新劇、ミュージカルなどあらゆる分野の劇場公演の中から、「面白い!」と思ったものを紹介します。従って、褒め上げる記事ばかりです。 <聞>出来るだけ、出演者やスタッフに「面白い!」わけを聞き、紹介します。

河村 常雄

 1973年入社。水戸支局、整理部(現・編成部)の後、学生時代より歌舞伎に興味を持っていたことから芸能部(現・文化部)に移る。演劇担当、デスクを経て、専門委員。この間、文化庁芸術祭・芸術選奨の演劇部門審査委員、鶴屋南北戯曲賞選考委員などを歴任。現在、読売日本テレビ文化センター勤務。著書に「かぶき立ち見席」(演劇出版社)。

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